職場のメンタルヘルス(社会保険労務士 大阪)
職場のメンタルヘルスケア、メンタルヘルスマネジメント、佐伯社会保険労務士事務所(大阪府大阪市)
社員の「メンタルヘルスケア」−中小企業ではこう取り組もう!
メンタルヘルスケアって?

 メンタルヘルスは「心の健康」と訳され、メンタルヘルスケアは「心の健康づくり」と言えます。厚生労働省の指針では、メンタルヘルスケアを「労働者の心の健康の保持増進のための措置」としています。

 また、指針ではメンタルヘルス不調という表現がされていますが、メンタルヘルス不全という言葉もつかわれます。メンタルヘルス不全は、うつ病や不安障害などの総称です。

 最近では、このメンタルヘルス不全にかかわる相談が増えています。労働トラブルと言えば、2、3年前であれば、解雇をめぐる紛争でしたが、今では社員が心の病気(精神疾患)のため働けなくなり、会社の対応が不誠実ため労働(労使)紛争となってしまった例など、メンタルヘルスに関連したトラブルが目立つようになりました。

職場ストレスが危ない!

 メンタルヘルス不全の多くはストレス性疾患と言われますが、ストレスの要因は、人員削減等による慢性的な長時間労働、成果主義導入による過度の重圧など、いろいろと指摘されています。しかし、人間関係の悩みという側面では、会社の上司と部下の人間関係がストレスをつくりだす最大の原因になっています。

 上司のパワハラと言わないまでも、毎日毎日、不能呼ばわりや誹謗される言葉を繰り返されて、ある日限界を超えてしまい、もう死にたいと思う気持が抑えられなくなってしまう。それでもなんとか踏みとどまって、こんなに死にたいと思う自分がおかしいのではと気づき、専門のお医者さんに行ってみると「うつ病」と診断をうける。

 そして、その日から長期休職を余儀なくされる。というケースがそれほど特別なことではありません。

 どうしてこうなってしまうのか、まず、上司の性格上の問題が指摘されます。上司がナルシストであったり、自己愛が強すぎたりしていないでしょうか。部下の話や説明に耳を傾けない上司であったりしていないでしょうか。結果を出せない部下にただただ叱咤するだけの上司ではないでしょうか。

 それが毎日毎日繰り返されると、部下のストレスは増幅されるばかりで、いつしかメンタルヘルス不全となり心の元気を失ってしまいします。

 上司の性格上の問題と言いましたが、実際は管理職や上司のほうが仕事の結果や成果、達成スピードを求められています。

 さらに、きびしい経営環境の中で成果主義の圧力を受け、失敗のゆるされない職場の中心にいて、部下以上に長時間労働を強いられているのは、上司である管理職です。話を複雑にしてしまうかもしれませんが、むしろ、一番危ないのは上司であるかもしれません。

 また、上司だけの問題ではなく、コミュニケーションが苦手な部下が増えているのも事実です。面と向かって上司にうまく伝えることができなくて、誤解を生みやすいということもあるのではないでしょうか。

 メンタルヘルス研修のひとつであるアサーション(直訳すると「主張」すること)研修では、自分に正直に主張し、同時に相手も尊重するような表現を学び訓練します。そのような自分も相手も大切にすることができるコミュニケーションが欠落していることが人間関係を悪化させ、必要以上に摩擦を生んでいるのではないでしょうか。

不誠実な対応がトラブルに

 ある会社の社員が、職場でいじめを受けて、うつ病となり勤務することができなくなり退職したケースがあります。その数か月後に会社の人事労務部にメールで職場のいじめの体験を実名をあげて詳細に訴えました。

 しかし、会社の人事労務担当者からの返信のメールには「貴重なご意見ありがとうございました。今後の参考にさせていただきます」と形ばかりの言葉が並んでいました。

 さらに、泥沼となるのは、自分が送ったメールと会社からのメールを会社名やいじめをした上司・先輩社員を実名のまま、自分のブログに公開しました。このようなメールのやり取りを実名のまま公開することで何か解決されたのでしょうか。

 このケースだけではなく、インターネット上に会社への不満や上司のセクハラやパワハラへの怒りを書き込むケースが増えているようです。

 メンタルヘルス不全の社員がでると、職場の仕事効率はさがります。長期休業者がでると、周囲の社員への負担は増大し、放置していると生産性も低下していきます。さらに、労働災害の認定をめぐる争いや、会社の対応が悪ければ労働トラブルともなり、会社が安全配慮義務を怠った責任を問われ、損害賠償を求められるケースもあります。

 今年3月1日には労働契約法が施行されました。その第5条には、「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。」とあります。

 いままでは判例のなかで言及されてきた「使用者の安全配慮義務」が、はっきりと法律のなかに記されたのです。

小さな会社にできること

 メンタルヘルスケアは、大企業よりも規模が小さい会社ほど取り組みは遅れています。しかし、メンタルヘルス不全の社員が出れば、より大きなダメージを受けるのは、むしろ、中小企業です。

 平成18年3月、厚生労働省は「労働者の心の健康の保持増進のための指針」を公示しています。その指針には、「小規模事業場におけるメンタルヘルスケアの取組の留意事項」という項目があります。

 産業医の選任を義務づけられていないような労働者50人未満の小規模事業場では、メンタルヘルスケアの取組は困難なようですが、指針では、衛生推進者または安全衛生推進者を事業場内メンタルヘルス推進担当者として選任し、地域産業保健センター等の提供する支援等を積極的に活用し取り組むことが望ましいとしています。

 また、事業者はメンタルヘルスケアを積極的に実施することを表明し、セルフケア(社員自身によるケア)、ラインによるケア(管理者によるケア)を中心として、実現可能なところから着実に取組を進めるように、としるされています。

 メンタルヘルスケアへの取組は、人事労務担当だけはなしえない事柄ですから、指針にあるように経営トップが会社としてメンタルヘルスケアに取り組むことを明らかにしてから、社内にメンタルヘルスの担当や窓口を置く必要があります。

 実現可能なところから着実に取り組んでいく、ということも大切な指摘だと思います。職場環境の改善、長時間労働の解消などが第一だとは思いますが、きびしい経営環境の中では容易に解決できることではありません。まずは、社員自身のケアと上司・管理者によるケアを中心にして、何から始めることができるのか考えていきましょう。

早く気づくことが大切

 社員自身が日々の心の変調に気づき、適切な対処を行うことが大切なことです。ストレスチェックリストを定期的に利用し、早期発見・早期対応に努めるようにしましょう。

 いろいろなストレスチェックリストがあるそうですが、厚生労働省は「労働者の疲労蓄積度自己診断チェックリスト」を作成しています。このチェックリストは、厚生労働省や中央労働災害防止協会のホームページに掲載されています。

 また、「職業性ストレス簡易調査票」というストレスチェックリストは、東京医科大学公衆衛生学講座のホームページからダウンロードすることができます。

 しかし、メンタルヘルス不全のなかでもっとも多い「うつ病」は、なかなか本人が気づきにくい病気だと言われています。ですから、上司や周囲の社員が気づくことこそ、さらに大切なことです。そのために、メンタルヘルス推進担当者や管理職、社員ひとりひとりがメンタルヘルスの知識を得ることが必要です。

 会社の新人研修や管理者研修においてメンタルヘルスを重要な課題のひとつとして取り上げることをおすすめします。大きな規模での研修でなくても、少人数のグループ研修を実施するとか、それも難しいようであれば、メンタルヘルスに関する冊子や資料を配布するなど、やりやすい方法でしてみてはいかがでしょうか。

 ある信用金庫は全職員にこの検定試験を受けてもらったそうですが、全社員は無理であったとしても、メンタルヘルス推進担当者の方だけでも受けていただくか、もしくは人事労務担当者、管理職、または新入社員に受けてもらうか、これも可能な範囲内で検討していただければと思います。

いろんなサービスをさがそう

 社内に専門家がいないからという理由で取り組もうとしない会社もあるようです。小規模な会社では、専門の産業保健スタッフを配置することは困難なことです。そのような場合など、地域の産業保健センターなど公的機関やEAP会社など、外部のサービスを極力利用されてはいかがでしょうか。

 地域産業保健センターは、50人未満の事業場とその従業員を対象にメンタルヘルス相談や無料の産業保健サービスを提供しています。また、地域産業保健センターは労働基準監督署の管轄ごとに設置され、各医師会が運営を委託されています。

 勤労者メンタルヘルスセンターは、労災病院に設置され、勤労者のメンタルヘルスに対応するため、健康管理を含めた心身医学分野の総合的医療を提供しています。

 職場でのストレスおよびストレスに起因する諸症状、心の健康問題を対象として、ストレス関連疾患の診療、相談、メンタルヘルスに関する研究、勤労者・医療従事者等を対象とした講習・研修などを実施しています。勤労者メンタルヘルスセンターが設置されている労災病院は、労働者健康福祉機構のホームページに掲載されています。

 EAP(Employee Assistance Program)は、従業員支援(援助)プログラムの略称で、「契約企業のメンタルヘルスやカウンセリング、心の病による休職者の復職支援など、援助活動」を行っています。このようなEAP会社との契約など、民間の専門機関の利用に際しては予算の問題もありますが、助成金の制度もあります。

 中小企業職業相談委託助成金は、職業相談(メンタルヘルスを含む)を外部の専門機関等に委託し実施した場合に、費用の一部が支給される助成金です。詳細は、雇用・能力開発機構の各都道府県センターへお問い合わせください。

就業規則を見直そう

 いますぐにでもしなければならないことは、就業規則の整備です。メンタルヘルス不全に対応した就業規則とするために休職規定等を見直しましょう。

 心の病気には身体の病気以上に個人差がありますから、個別の対応ができるように休職期間の延長規定はあるのか、復職に際し元の職場への復職が難しいときに他の職務に就かせることもあるのか、復職後の慣らし勤務(リハビリ出社)といった制度はあるのか等、就業規則の見直しは必要です。

 立派だなと思っていた会社でも、復職時の慣らし勤務の規定がなく、復職しようとしている社員の前で右往左往しなければならなかったりして、受け入れ準備不足のために症状が悪化してしまうケースもあります。

 厚生労働省が「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」を平成18年10月に発表しています。手引きでは、各会社の実態に応じた職場復帰支援プログラムやルールを策定するように求めていますので、早急に就業規則の整備などルールづくりに取り組んでください。

人事労務担当者の方へ

 あれもこれもと考えてしまうと、かなり重たい荷物を背負ってしまいます。まずは、地域にどのような公的なサービス等があるのか情報を収集したり、また、就業規則や社内規程の見直し・整備など、やりやすいことから始めていけばいいのではないでしょうか。

 なお、メンタルヘルスについては、プライバシーの問題で慎重な対応も考えなければならない面もありますので、よく注意しなければなりません。

 この記事は『経理ウーマン』2008年5月号に投稿した記事ですので、無断掲載は禁止します。(特定社会保険労務士 佐伯博正)

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第5回メンタルヘルス・マネジメント検定試験
 第5回メンタルヘルス・マネジメント検定試験(大阪商工会議所主催)が2008年10月19日(日)に開催されます。申込期間は8月13日(水)〜9月12日(金)。受験地は札幌、仙台、東京、横浜、名古屋、大阪、広島、高松、福岡です。

 詳細は、こちらをご覧ください。

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メンタルヘルス不全(精神疾患)の労災認定が増加
 メンタルヘルス不全(精神疾患)の労災認定が増加しています。労災の申請などでお悩みの方は、当事務所までご相談ください。連絡先は、次のホームページをご覧ください。

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社員のメンタルヘルスケア−中小企業ではこう取り組もう!
 執筆させていただいたメンタルヘルスケアの記事(社員のメンタルヘルスケア−中小企業ではこう取り組もう!)が、月刊 経理ウーマンの5月号(2008年4月20日発行)に掲載されました。

 月刊 経理ウーマン(研修出版社)のサイトで、「社員のメンタルヘルスケア−中小企業ではこう取り組もう!」の記事冒頭部分が紹介されています。こちらをご覧ください。

経理ウーマン

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厚生労働省職員にメンタル疾患が急増
 厚生労働省と全労働省労働組合(全労働)の団体交渉議事概要(2008年3月7日)が厚生労働省ホームページに掲載されています。

 その中で、公務災害について、メンタル疾患が急増していること、また労災と違い、公務災害の場合には使用者が業務上であるか業務外であるかを認定する仕組みとなっていることは、おかしいのではないか、と指摘されています。

 また、指定病院が少ないことや(非常勤職員を含めて)職員に公務災害の制度自体が十分に周知されていないことが問題にされています。詳しくは、こちらをご覧ください。

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職場いじめがまん延(産業カウンセラー協会調査)
 日本産業カウンセラー協会が2007年11月にカウンセラーに行った調査により職場いじめがまん延している実態が明らかにされました。

 日本経済新聞にて日本産業カウンセラー協会東京支部電話相談室長の山口志治子さんが報告されています。

 「パワハラを起こす上司は仕事ができることが多い。成績向上のため部下を強引にまとめるが、育てる力はない。」

 「いじめられる側は自分の欠点や能力不足を考え、自分を責めてしまう。家族や友人に助けを求められず『情けない自分』を隠すことにエネルギーを使いがち。」

 「いじめの被害者に職場の人が手をさしのべることはまれだ。子どもと同様に、いじめられる側になっては大変と、保身のためいじめる側につく人は多い。」(日本経済新聞2008年3月8日夕刊より)

 中学生や高校生の頃に学校でいじめを受けた世代がいま、職場でいじめを受けているケースが増加しつつあります。事態は相当に深刻そうです。

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セルフケアとラインケア(メンタルヘルスケア)
 社員自身が心の変調に気づき、適切な対処を行うことが大切なことです。言い換えれば、セルフケアが重要です。

 自分はおかしいなと思えば、専門のお医者さんをすぐにたずねることが一番かもしれませんが、自分はおかしいと思えば、ストレスチェックリストを利用されることをおすすめします。

 いろいろなストレスチェックリストがあるそうですが、厚生労働省は労働者の疲労蓄積度自己診断チェックリストを作成しています。このチェックリストは、厚生労働省や中央労働災害防止協会のホームページに掲載されています。

 また、職業性ストレス簡易調査票というストレスチェックリストは、東京医科大学公衆衛生学講座のホームページからダウンロードできます。

 しかし、メンタルヘルス不全のなかでもっとも多い「うつ病」は、なかなか本人が気づきにくい病気だと言われています。ですから、上司が気づくことこそ、さらに大切なことです。

 心の病気といってもうつ病でだけではありません。そういう心の病気の症状を専門的に勉強することも可能であればよいことだと思います。

 しかし、専門的な知識がなくても、上司がいつもの部下とは違うことに気づくことは可能です。その前に、部下の「いつも」を理解していないと違いが分かるはずがありません。

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プロフィール

特定社労士 佐伯博正

Author:特定社労士 佐伯博正
大阪で開業している特定社会保険労務士・行政書士です。

佐伯社会保険労務士事務所
大阪市北区天満4−5−3
SHK盛和ビル301
電話06−6357−6171



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